これまでの2回で、スカとレゲエ、スカとロックステディの違い、そして聞こえ方の違いは理解してもらえたはず。
今回は残るもう一つの組み合わせ、ロックステディとレゲエについてです。
ロックステディはスカのテンポが落ちたことにより、アレンジが必然的に変化して出来たもの。
“ロック”とはロックンロールのことではなくて、ジャマイカでは“リズム”や“ビート”の意味で使われる。つまり「ビートがステディになったもの」。読んで字の如しである。
ロックステディ期の歌の最大の特徴は、スイートでメロウでソウルフルなものが増えた。これに尽きる。ゆっくりになったリズムに呼応して、美しいコーラスワークを重視したメロディが使われるようになったのである。
実際、この時期、多くのコーラス・グループが人気を博した。ヘプトーンズ[6]、パラゴンズ、メロディアンズ、テクニークス、カールトン&ザ・シューズ[7]・・・。
このコーラストリオ(たいがい3人組)という形式は70年代のルーツレゲエ時代にも受け継がれる。つまり、レゲエのコーラスワークのパターンは60年代に既に出来あがっていた、と言える。
もう1つ、ベースラインが細かく動き出した、ということは前々回に説明したが、この時形作られたベースラインがそのまま現在に至るまでレゲエの基本ベースラインとなっている。
コーラスワークとベースライン(とそれ以外のアレンジも含む)、この2つがレゲエとロックステディではほぼ共通。では、境界線は何? ということになる。
ひとことで言えば「ロックステディとは60年代の音質で、雰囲気が甘いヤツ」となる。はなはだ感覚的で申し訳ないが、他に基準が見当たらない。
実際、ロックステディ期の歌はラヴソング(もしくはラヴソングに仮託したメッセージソング)が圧倒的。全体のアレンジがそれに合わせて、とにかく甘くて胸キュンになるのは自然なこと。
そして、レゲエ期になるとラスタ思想や体制(バビロン)に抵抗する思想が注入され、それは自然と音楽にも反映された。
甘い雰囲気はどちらかというと排除され、攻撃的であったり、共同体的であったり、そして何と言ってもガンジャ的になったのだ。
もちろんシンプルなラヴソングも存在し、それはラヴァーズロックというふうに呼ばれるようになった。ラヴァーズ・ロックステディなのか、ラヴァーズの“リズム”なのかは知らないが。
ただ、そうしたラヴァーズレゲエも年代の違いのため、ロックステディとは音のテイストが決定的に違う。
結論としてはロックステディとレゲエの違いをわかるためには、ゴリゴリのロックステディを浴びるように聴いてください。
ということになるかな。
そうすれば、ここで言っているような雰囲気とかテイストとかいうものがわかってくるはず。
それは、スカでもレゲエでも同じなんだけど。
「能書きばっかりたれんと、オススメDISCでも紹介せんかい!」
という声が聞こえてきそうなので、次回は60'sジャマイカン・ミュージックのオススメCDを紹介しましょう。
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